第6章 人生の核
「否定ばかりの世界で肯定は難しい。だけど、そんな世界の何処かで、あなたを肯定する人がいる。それを忘れないで」
親に見張られてユキと暫くの間会えないことを伝えたら、そう言われた言葉だ。
彼女の名前は『白雪美姫』。
可愛らしい名前だけど、あまりの気の強さに男がドン引くほどだ。
打算的な性格でちょっと……いや、かなり変わった子だった。
どのくらい変わっているかと言うと、待ち合わせ場所に遅れてやって来たかと思いきや、大きな馬の被り物を被って「出来たてのポップコーンはいかが?(裏声)」と両手にポップコーンを持って登場するほど。
遅刻したから怒られると思っての行動だったらしいけど、おかげであいつに対するイメージが『渋谷のやべぇ奴』になった。
渋谷のやべぇ奴ことユキなのだが、今の私がいるのは彼女のおかげだ。
当時の私は陰気で生気がないと陰口を叩かれることが多くて、今の私とは天と地ほどに違う。
また、彼女は嘘は絶対に言わなかった。
人を否定することもしなかった。
嘘や否定するくらいなら口を閉ざした。
──美しい人だと思った。
基本的に自分の利益優先に動くのに、他人を傷つけることは決してしない。
尊敬する彼女に倣って私も彼女の良いところを真似した。
つまり、今の私がいるのは9割ユキのおかげだ。いや、9割は言い過ぎか。7割?6割?まぁそんくらい。
おかげ様で、周りから期待やら理想像を押し付けられても「知るか。地面でも舐めてろ」と叩き潰すくらいは出来るようになった。
親から離れて自立したときは、私から会いに行くって約束をして別れたのが最後。
見事な死亡フラグだった訳だけど。