第5章 喧嘩は程々に!
「教えたければ、ジェイドとそこで無様にぶら下がっているフロイドに教えてやって下さい。僕は結構です」
「……キミが一番飛べてないように見えたのだけど?」
「う、うるさいっ!!今練習してるんです!!邪魔しないで下さい!!」
箒に跨ってぴょんぴょん飛び跳ねてるだけじゃん……ちゃんと飛べるようになる頃にはおじいちゃんだよ……。
ちょっと口出しするくらいなら大丈夫よね?
「まずは箒を浮かすところから始めてみてはどうだい?ほら、箒から降りて地面に置いて……」
「やめてください」
うん……プライド高いのは結構だけど、あんたそのままじゃどの道笑い者よ?
だったら今のうちに素直に聞いておいた方が傷口浅くて済むぞ。
「わぁッ!!!」
ああ、ほら、箒に魔力込めすぎて箒だけ飛んで行っちゃったじゃん。
アズールさんよ、本当に大丈夫なの?
「こんなことで借りは作りたくありません。後から非常識な対価を求められても困ります!」
あ、そっち?プライドの問題じゃなくて強請られることに警戒してたのね。
……とはいえ、理由がわかっても取り引きする材料なんぞない。
面倒だし、どうせ私には関係ないんだから放っておいてもいいんだけど……。
ちら、とフロイドを見るとすごく疲れたのか座り込んでいる。
うん、決めた。どうせなら対価もらうか。
「なら、飛行術の補習の時にフロイドくんが居たら私に連絡くれないかい?彼には私が直々に教えたいんだ」
「はぁ!?」
「ああ、それなら構いませんよ」
「よくねーよ全然!!勝手に俺を対価に差し出すな!!!」
「フロイドくん」
にっこり笑って彼に近づけば、不穏な気配を察したフロイドの顔は血の気が引いて青くなる。
地面に座り込む彼に目線を合わせるため、腰を低くする。
奴が腰を引いて逃げようとするので肩を掴んで押し倒し、馬乗りになる。怒鳴ろうと大きく開けかけた唇に人差し指を置いて、私は今日一番の笑顔を浮かべた。