第5章 喧嘩は程々に!
「この……!」
声がしたから顔だけ後ろに向けると、マジカルペンを私に向けて火炎玉を放ってきた。
急いで近くの教室のドアに体当たりしてドアごと倒れ込むと、火炎玉が通り過ぎて行った。
あっぶねぇ。ギリギリ避けれたからよかったけど、あともう少しで火炙りになるところだった。
教室内にいた生徒たちが目を丸くして呆然と私を凝視している。ごめんね、すぐ出てくから。
バタバタと走って来る音がする。
私は出入り口付近の壁に寄りかかり、奴が来るのを待つ。
鬱陶しいターコイズブルーの髪が教室へ入って来たと同時に顔面目掛けて足を振り上げた。
「うわっ!!?」
寸前でしゃがんで回避されたけど、隙ができた。良い反射神経をお持ちだね!
私はそのまま教室を出て、階段を駆け上がる。
「あいつ絶対殺すッッ!!!」
何やら物騒な言葉が聞こえたな。
適当に空き教室へ入り、教壇に身を隠す。
少し遅れてやって来たあいつは、先程のこともあってか警戒しながら教室に入って来る。
キョロキョロと辺りを見渡して私を捜している。奴がこちらに背を向けた瞬間に教壇から飛び出して椅子を蹴り上げた。
「わあぁぁあ!!!あっぶねー!!」
またしても避けられて、椅子は窓を突き破って下へ落ちていった。外から驚いた声が聞こえてきたけどすまんな。今それどころじゃない。
さっきと同じように廊下へ飛び出し、奴を誘い出す。
逃げるのにも飽きたし、そろそろ反撃に転じようかな。
胸ポケットからマジカルペンを取り出して廊下全体を氷漬けにする。
「うわぁ、なにコレ!?」
背後から慌てた奴の声が聞こえた。
私はくるりと振り向いて、スケートを滑るように奴へ突っ込む。
滑る床なんて慣れてないだろうから立ってるのがやっとのはず。
しっかりとスピードをつけて奴の脇腹に蹴りをお見舞いしてやれば、痛みにうずくまった。
その隙を見逃さず、脳天に踵落としを決めてやろうと足を振り下ろした。
「なっ……」
──が、なんと奴は片手で私の足を受け止めた。
そのまま足を掴まれ、引き倒された。体勢を立て直そうとする前に馬乗りになられて胸ぐらを掴まれる。
「つーかまえた」