第5章 喧嘩は程々に!
「それにしてもあんた凄いね〜。相手が雑魚とはいえ圧倒的だったじゃん」
………随分と不躾な奴だな。
まぁ褒め言葉として受け取っておこう。
「んー……あんたが強いんじゃなくてそいつらが弱かっただけぇ?あんたみたいな見るからになよっちぃ奴に負けるなんて稚魚並の雑魚じゃん」
は?
「オーララ……これは手厳しいな。しかし陸に上がりたての稚魚にそのように言われてしまうとは私もまだまだだね」
「……は?なんで陸に来たばっかなの知ってんの?つーか稚魚って誰のこと言ってんの?」
「子供を稚魚と表現していたから人魚かと推測したまでだよ。キミのような目立つ容姿は去年見なかったので今年入学してきた新入生だろう?
まだ陸に慣れず、まな板の鯉のようにビチビチ飛び跳ねてる姿はとても愛らしいと思うけれど、あいにく無抵抗な稚魚を狩る趣味はなくてね。さっさと失せたまえ」
吐き捨てるように言えば、怒りを隠しもせずに大股で近づいて来る。
ぐいっと力任せに胸ぐらを掴まれた。
こめかみに青筋張ってますよ稚魚ちゃん。
「いい度胸してんじゃん。絞められてぇの?」
今にも噛み付かんばかりの迫力をどうも。
「さっさと失せろ」と忠告したのに、聞き入れてもらえなくて残念だよ。
「やれるものなら、やってみたまえよ!!」
相手の胸ぐらを掴み返して、顔面に頭突きを食らわせてやった。
それを合図に奴もスイッチが入ったらしく、足払いしようとした長い足を後ろへ跳んで躱す。そのまま私はあいつが隠れてた大木の枝に乗る。
「ムシュー!キミ如きが無理だと思うが私を捕まえてごらんよ!そうしたら先程の言葉を取り消そう!」
「……っ上等じゃん」
奴の腕が胸ポケットへ伸びた。おいおい、まさか魔法使ってくる気か?
予想通り私に魔法を撃ってきたので、二階の窓へ飛び移った。もちろん都合良く窓なんて開いてなかったからガシャーンと派手な音立てて割れた。
周りは窓から割って侵入してきた私に大層驚いていたけど、今は構ってる余裕ないんだ。ごめんね。
そのまま真っ直ぐ長い廊下を疾走すると後ろから足音が聞こえる。ちゃんと追って来てるみたいだな。