第6章 言ノ葉【沙明】
やっぱりか。
確信は持てなかったが、コイツの反応を見るかぎり泣いていたんだろう。
「……なんでそんなこと聞くの」
「そりゃ女の涙は中々堪えるし?……あとは単純に俺のせいなのかと思ったから、じゃだめか?」
少々ふざけながらもきちんと真面目に聞く体勢に入る。
教えて欲しい。俺だけに。
誰にも話してない、話せていないんだったら、俺に。
我ながら独占欲が強いとは思った。
でも別にいいだろ?俺はコイツの全てを独り占めしたい。その第一歩だ。
「……わかった。話す」
「よっしゃ」
「でも絶対笑わないで。あと、話した内容は全部忘れるって約束してくれるなら」
「ああ、約束する」
なんだか、俺とコイツだけの秘密を共有しているみたいで、ちょっと嬉しくなった。
「私がなんで泣いてたか、でしょ……?」
「そうだ」
「私、沙明のことが好きなんだ」
「………ハ?」
ちょっと待て。オイオイオイオイ。
マジ?え、ホントに言ってんの?
「……お前それホント?」
「いいから!続き!」
「お、おう……」
「好きだから、っていうのを前提に、セツのことがずっと羨ましかった。沙明に好かれてる。私にはそんな素振り一度もなかったし、くだらない嫉妬でセツとなるべく距離を置くようになった。限界だったの。もう、セツに嬉しそうに話すキミの姿を、見たくなかった……どんなに頑張ったって私じゃダメなんだもんッ……泣きたくもなるよ……!」
あぁ……そうか、そうなんだな……
ツバサは、こんなにも俺のコトが好きで、そんな自分の感情を抑えながら頑張ってここで過ごしてきたんだ。
こんなときなのに、どこかで喜んでる俺がいる。
辛くて悲しい思いを打ち明けているツバサの横で、一人嬉しくなっている俺を、自分で最低だと思った。