第6章 言ノ葉【沙明】
「聞いてくれてありがとう。……約束は守ってね」
少し赤く腫れた目をこちらに向けて、そう告げた。
「悪ィな、そりゃ無理だ」
「ちょっと……!?」
真隣で好きな女に泣かれて、黙ってる男がどこにいる?
そのままツバサを腕の中に閉じ込め、子供をあやす様に頭を優しく撫でた。
「いつ俺がお前に興味無いつった?本気で好きだったら、あんなおちゃらけた態度とらねェよ。嫌われたくねェから、ふざけた発言はお前の前じゃしねェようにした。……もう分かるよな?」
「それって、つまり」
「アーアー言うな言うな!恥ずいわ!……これで分かったろ。頼むから、いい加減泣き止んでくれよな……」
体温を分けるように、優しく、それでいて力強く抱きしめる。
お前は、笑ってるのが一番可愛いよ。
触れた背中から伝わる心音。だんだん落ち着いてきている。
もう、大丈夫か。
「……沙明?」
「ン、どーした」
「……明日も、会えるといいね」
「……おう」
そうだ。まだこの船にはグノーシアが残っている。
ここでツバサと気持ちを共有したとしても、明日には俺が消えているかもしれないし、その逆も然り。
コイツが消えたら、俺も死ぬか?
それもありだななんて考えてしまう。
恋は自分本位で、愛は相手本位というように、コイツのためならなんだってしてあげたいと思うし、コイツとならなんだって出来ると思う。
これからの人生に、何があってもツバサと歩いていきたいと心から感じた日だった。