第2章 Messiah【レムナン】
二人で機械について語り合っていると、ポーンと軽い音がなった。
「約三十分後に空間転移を開始致します。乗員の皆様は速やかに自室にお戻りください」
空間転移のアナウンスをするLeViさんの声。
隣に座っていたツバサさんが立ち上がる。
「結構長いこと話しちゃったね。そろそろ部屋戻ろうか」
「はい、そうですね」
今日のお話はどうやら終わりのようだ。
ツバサさんについてもっと知りたいと興味が湧いてくる。
また明日二人で話そう。
「ツバサ、さん。明日も、僕と話しませんか……?」
「うん、いいよ。喜んで」
「わぁ、ありがとうございます……!」
彼女の前だと自然と笑みが浮かんでくる。不思議だ。
自分でもわかるくらい他人と話していても僕はあまり表情が変わらないのに、彼女と話していると楽しい、嬉しいという感情が顔に自然と表れる。
「僕、ツバサさんのこと、もっと知りたい、です」
「本当?嬉しいな。私も教えられることは何でも教えてあげるよ。レムナンのこと好きだし」
今、彼女はなんて言った……?
僕のことを、好き……?
トラウマが蘇る。僕の頭の中に現れる。
「やめてください!そういうのは嫌なんです……!」
思わず叫んでしまう。彼女の前だというのに。
「ち、違うよ、そういう意味じゃないから……この船の中だと一番仲がいいと思ってたから」
「あ、あぁ……ご、ごめんなさい……!失礼、します……!」
「レムナン!」
衝動的に言ってしまった嫌悪の言葉。後ろから彼女が僕の名前を叫ぶ。いたたまれなくなって逃げ出す僕。
彼女はどう思っただろう。嫌われてしまっただろうか。
仲良くなれたと思ったのに。本当は、僕も……
僕も、何だろう……?
女性は正直苦手だ。悪夢のような日々が蘇ってきてしまう。
でも、彼女なら、ツバサさんなら。
唯一何でも許せる女性の人かもしれない。
……これが、好きだと、いうことなのかもしれない。