第2章 Messiah【レムナン】
そういえば、僕はツバサさんのことをあまり知らない。
僕ばかりがツバサさんに自分のことを話している。
失礼を承知で聞いてみようか……?
「あの、ツバサさん。僕もツバサさんのこと、知りたいです」
「ん、私ばっかりレムナンのこと知ってるのは不公平だもんね。いいよ、なんでも聞いて」
お許しが貰えたので早速聞いてみることにする。
「それじゃあ、失礼ですけど、年齢はいくつ、なんですか?」
「おおう、世の女性には禁句の質問だね。私は気にしないからいいけど。私は20歳だよ」
「僕の、1個上ですね」
「お、そうなんだ。あんまり年齢差なかったね」
「そう、ですね。この船に乗る前、何をなさって、いたんですか……?」
「エンジニアだよ。色々機械をつくったり、弄ったりしてた。だから、私も実は機械好きなんだよね」
「そうなんですか……!わぁ、嬉しいな……」
憧れの人も自分と同じものが好きだと知って、とても嬉しくなる。仲良くなりたい人との共通点が見つかった。
自然と頬が緩む。
「ふふっ、レムナン笑うと可愛いね」
「え、そ、そんなこと……ありま、せん……!」
慌てて否定した。
可愛いと言われて嫌な気はしないし、むしろ嬉しい。
でも、男に生まれたからにはかっこいいと言ってほしい。
ツバサさんに言われる褒め言葉は、どんなものでも嬉しいけれど。
彼女は、本当に魔法使いのような人だ。
僕を夢中にして、巧みな話術という名の魔法で僕をいつも楽しませてくれる。
綺麗で格好いい、素敵な女の人だ。
その点でも、彼女は不思議な人である。
女性が苦手な僕が、今のところ唯一スラスラと話せる女性。
仮に、この船を降りる時が来たら。
その時は、ツバサさんと一緒のところで降りたい。