第2章 Messiah【レムナン】
ここの動力炉はとても魅力的だった。
OEライクな外観の割には、蓋を開けるとなんとGSCの92世代というギャップ。それでも流路は冗長ではなかった。
見たことも無い動力炉。
案内の時はあまり地下には行かなかったため、ずっと気になっていたのだ。
ここで食事をすることができたら、どんなに幸せだろうか。
でも、ツバサさんとも一緒に食べたい。
僕はツバサさんに憧れに近い感情を抱いている。
可愛らしい見た目と明るめの性格なのに、何かを決意して行動するときの表情がとても格好いい。
そういえば、年齢を聞いていなかったな。
……いや、やめておこう。年齢なんて聞いたら失礼だし。
昔からどうも人と話すのが苦手だったからか、相手をいかに傷つけないようにするかという場面では長けていたと思う。
機械に触れている時間が一番の安らぎを得た。
「レムナーン?どこー?」
扉の向こうからツバサさんの声が聞こえる。
どうやら僕を呼んでいるようだ。
「あ、いたいた。探したよレムナン」
動力室の扉を開けて中に入ってくるツバサさん。
「すいません、手を、煩わせてしまって……僕に、何かご用ですか……?」
「ジムでひとっ走りして、休憩もして毎日のメニューこなしてやることなくなって暇になっちゃってさ。レムナンとお話でもしよっかなーって思っただけ。……にしても、なんで動力室に?」
「僕、機械が好き、なんです。エキゾチックな、匂いがして、落ち着きます」
「そうなんだ、知らなかったな〜」
「前の船では、50年以上、ずっと機械の側にいたので」
「え、50年以上!?」
「あ、体感では4年程度、なんです……」
「あ〜、そういう事か〜」
「深宇宙の、往還探査船で、コールドスリープして、目覚めて、計算類をチェックして、また眠る……ずっとそれの繰り返し、でした」
「辛くなかったの……?」
「やっぱり、機械に触るのが、好きですので」
「そっか、それならいいね。羨ましいな〜、自分の好きな物に好きなだけ触れるのって」
ツバサさんと話していると、自然と言葉が浮かんでくる。
不思議だな……