第1章 ずっと昔から【沙明】
そんな茶番も終わって、空間転移の時間になると、ツバサが起きた。
「ん……おはよう」
「起きたか。そろそろパーリィの時間だぜ」
「分かった。……ふぅ、それで、今日は誰を消すの?」
「昨日襲撃に失敗したってことは、まだ守護天使が残っていたってことだ。しげみちがそうだったかもしれない。でも、同じ人を連続で二回守ろうとは思わないはずだ。だから、もう一度ククルシカを狙う」
「ん、了解。じゃあ行こうか」
「アッハァ!イッツパーリナイ!グノーシア杯、消えるのはククルシカに決定だぜ!ンンンイエァ!」
やっぱりこの二人正反対だな……
爽やかで大人しいツバサと軽くてテンションの高い沙明。
確かに真逆の二人だけど、なんだかんだそれが噛み合ってる。
ククルシカの境界に触れて、電脳化する。
グノースの元へ送り込む。
皮膚がめくれかえり、体が膨らんで、弾けた。
人間を消すのにももう慣れてきてしまった。
……僕はどれだけククルシカや皆を消してきたんだろうか。
……そんな気分になっている場合ではない。
次の日も全員生き残らなければ。
そういえば、銀の鍵の様子はどうなんだろう。
鍵を出して、特記事項を見てみる。
すると、ツバサと沙明の特記事項が新たに解放されていた。
ツバサは二つ。
"沙明に昔から好意を抱いている"
"一度眠り出すと、満足するまで起きない"
沙明は一つ。
"ツバサに昔から好意を抱いている"
SQとレムナンの関係とは違う、少し甘酸っぱさがある関係。
もどかしい二人の恋と幼少の呪縛。
早く二人が報われますように。
「…ライト?ボーッとしてるけど、どうかした?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
今の僕にとってグノースが神なら、さっきの願いを叶えて欲しい。
異星体グノース。まだまだ謎の多い存在。
今回の僕はそれに触れて、グノーシアになった。
早く乗員の皆が安全な宇宙でループを終わりたい。