第22章 兄と弟
おはぎを摘まみながら、ここのおはぎは美味しい、実弥さんはいつも二個ペロッと平らげる等、独り言のように話しもする。
玄弥くんも、最初こそ渋っていたが、一口食べてしまえば、美味しかったのか、すぐになくなってしまった。
私も食べ終わり、一息ついたところで、話しを再開する。
「さて、私の事は覚えてくれてるかな?もう一回自己紹介しとくね。三井ノブ。前に会った時に持って行った西瓜は食べてくれた?二人であの丸々一個は大変だったかな?」
「…いや」
玄弥くんの好物だ。若いし、悲鳴嶼さんとなら、ペロリとなくなりそうだ。
「そっか、食べれたなら良かった。私さ、記憶がなくってね。実弥さんのお屋敷の前で倒れてて、その縁でそのままお世話になってるの。ここまでは話してたよね?」
「あぁ」
「まぁ、自己紹介って言っても、記憶がないから、これ位しか言うことないの。年齢も出身も分からないし。ごめんね。んじゃ、今度は玄弥くんの番ね」
自己紹介と言ったものの、私の話せる事は少ないのだ。言いきった後、玄弥くんに投げ渡せば、案の定睨み付けられる。
「ハァッ?俺は話す事はねぇよッ!」
そう言われても、スルーだ。
こういう部分は空気を読まないおばちゃんパワーだ。
「名前は知ってるから~。そうだ、歳は?いくつ?」
「……16」
じっと玄弥くんを見ていれば、諦めたように答えてくれた。
「若いのね~!実弥さんとは少し離れてるのね」
改めて玄弥くんの年齢を聞いて驚く。こんなに体が大きくてしっかりしてるんだけど、現代だと高校生くらいだ。息子でもいい年齢だ。
「あっ?悪いかッ!」
何でも喧嘩腰になるのは、何だか反抗期みたいだ。
そう思えば、玄弥くんがまた更に可愛らしく思えてしまう。
「ううん。玄弥くん、しっかりしてるから、若くて驚いただけよ。そうそう、勝手にこんな感じで喋ってるけど、良かった?見た目は18、19位って言われるけど、もしかしたら玄弥くんより年下かもしれないし」
「…今更だろ。そのままでいい。その代わり、俺もお前に敬語なんて使わないからな」
ツンとして、そう言い切る姿は、精一杯虚勢を張っているように映る。
だからこそ、あまり刺激しすぎるのもいけないだろう。子どものようだけど、私の子どもではないし、私の今の姿は変わらないのだ。