第19章 恋柱と蛇柱
「お待たせしました」
ちょうど私達のやり取りを見ていたかのように、ちょうど良いタイミングで華子さんがやってきた。
お盆にはたくさんの甘味とお茶が載っており、机の上には所狭しと並べられた。これだけ並ぶと、本当に圧巻だ。
「いただきます。どれから食べようかしら?悩むわ~」
そう言いつつも、目の前の甘味は次々に口の中に消えていく。私はそれを見ながら、ゆっくりと食べ進める。
途中でお茶を飲みながら、チラリと伊黒さんに目を向ける。私に対しての視線とは違い、驚く程優しい目をしている。顔の半分は包帯で見えないが、こんな表情もできるんだなぁと微笑ましくなる。
「じろじろ見るな。何か言いたいことがあるなら、言え。ニヤニヤして。全く顔に締まりがないぞ、お前は」
どうもチラ見していた筈が、しっかりとガン見していて、更に顔も緩んでいたようだ。
流石に恥ずかしくなって、笑いながら答える。
「えっ?すみません。伊黒さんがとっても優しい顔でしたので、何だか嬉しくて」
「ハァッ?何だ、その理由は。だいたい、俺はそんな優しい顔などしていないぞ。お前の目は節穴か」
どうも伊黒さんの気に触ったようだ。殺気を含んだ鋭い視線とともに、早口で捲し立てるように、言葉が突き刺さる。
「いやいや…」
「俺がいつそんな顔をしてきたんだ?説明してもらおうか。説明できないなら、謝罪してもらおう。ほら、謝罪しろ。謝罪だ」
途中の私の言葉は全く聞いてもらえず、一方的に捲し立てられる。ネチネチ具合がすごい。
途中、他人事のように感じていたが、鋭い視線は私に向けられているから、自分が言われているのだと実感する。
「いや、それはあまり突っ込まないで欲しいと思うんですけど」
説明してもいいが、あまり知られたくないのではと思い、説明するのを避けた。すると、やはり伊黒さんから言葉の攻撃が始まった。
「説明できないか。やっぱりな。突っ込まないで欲しいとは、それは理由が説明できないと言うことだろう。俺がそんな顔しているわけはない。お前の目がおかしいのだろう」
勝ち誇ったように言われると、何だかモヤモヤとしてしまう。