第3章 煉獄家
杏寿郎の家に着くまでお互いについて色々話をした。
修行の事、呼吸の事、育手の事・・。2人は気が合うのか会話が弾み、あっという間に家に着いた。
「ただいま戻りました。」
杏寿郎の大きな声を聞いて、台所で朝食の準備をしていた千寿郎が駆け寄って来た。
「兄上、お帰りなさいませ。ご無事で何よりです。」
「お客様をお連れでしたか。」
「千、心配をかけたな。無事に最終選別を突破したぞ。」
「こちらは、殿だ。一緒に選別に残ったのだが、俺の我儘で一緒に来てもらった。」
「兄がお世話になっております。弟の千寿郎です。何もありませんが、ゆっくりとお過ごしください。」
は、杏寿郎を少し小さくしただけのそっくりな弟に驚きながら挨拶をした。
「突然お邪魔してすみません。です。お世話になります。どうぞお構いなく。」
千寿郎に用意してもらった水で足を洗っている時に杏寿郎が小声で言う。
「俺によく似ていて驚いだだろう?」
「ちなみに父上も奥にいらっしゃるが、同じ顔だ。これから挨拶に行くが、笑ってはダメだぞ。」
と、杏寿郎はいたずらっぽく言う。少し間をおいて、きりっとした眉の眉尻を急に下げ、困ったように続けた。
「・・父は・・少し不安定になっておいでだから、嫌な思いをさせてしまったら申し訳ない。」
「承知しました。大丈夫。」