第15章 一人暮らし
「・・・じゃあ、やっぱりどこかお屋敷を借りて別に暮らしてみるのもいいんじゃない?寂しいけど。」
「・・・すまない。」
「ううん。大切にしてくれて嬉しい。私の方こそこの家の居心地がよくて2年近く当たり前の様にいてしまった。」
「とりあえず、今日は私自分の部屋に布団を敷きなおすね。」
「・・・。俺は手を繋ぎながら寝たい・・。」
「・・・ふふふ。分かった。」
次の日、杏寿郎は朝から任務に行ったので、は部屋を借るために出かけた。
蝶屋敷の近くに丁度良い屋敷があり、とんとん拍子にその日の午後には借りる手はずが整った。
隊士は任務をこなしながら家事をするのは大変なので、隠の人たちが必要な世話をしてくれるという。家財なども最低限の物は隊が用意してくれた。
は、槇寿郎や千寿郎にこれまでのお礼を述べ、継子として稽古などで顔を出すので変わらず接して欲しいとお願いをした。
夕方にはそう多くない荷物を運び終え、一人暮らしが始まった。
荷物を運んでいる際に天元に会い、一人暮らしをすることと、屋敷が知られてしまった。
あの賑やかな煉獄家から出て、一人暮らしをすることはやはり、寂しかった。静かすぎて夜は目が冴えた。しかし、任務の前や明けに杏寿郎が屋敷に顔を出し、時間が許す限り他愛もない話をし、帰り際には口づけをして別れるので、杏寿郎との気持ちは前よりも近づいた。