第2章 転機
選別に残った者達が集められて隊服や日輪刀の説明を聴いた。杏寿郎は聴きながらずっとのふわふわの髪と整ったその横顔をぼんやりと見ていた。
話が終わり、皆それぞれ帰路につき始めた。
も身支度を始めたので、慌てて声を掛けた。
「 君はこれからどちらへ戻られるんだ?」
少しの沈黙の後、
「・・それが、特に戻るところは無いの。」
「家族は4年前に鬼に喰われてしまって、一緒にすんでいた育手も半年前に病で亡くなった。」
「鬼殺隊になれればすぐに任務に就いてあちこち行くのかと思ってた。」
は少し首をかしげて微笑みながら言った。
「戻るとしたらとりあえず育手の家かな。そこも長くは住めないけど。」
つらかったろうに、事も無げに亡くなった家族の話や育手の話をするを見て杏寿郎は不躾に悪いことを聞いてしまったと思った。
「も、もし君が良ければ、今日は俺の家に来ないか?ここから歩いて四半刻ほどの所にあるんだ。風呂に入って身綺麗にしていくといい。」
「育手のお宅には明日送って行こう!」
非礼を謝ろうと思い咄嗟に口を開いた筈が、出てきた言葉に自分でも驚いた。
も驚いた顔をしてこちらを見ている。
何故初めて会ったばかりなのにそんなことを言うんだろう。という顔をしているのを見て杏寿郎は顔が赤くなってくるのを感じたが、もう口から出てしまった言葉は取り消せないので正直に言った。
「もう少し君の事が知りたくなった。良かったらもっと話ができないだろうか?」
真ん丸くなっていた翡翠色の瞳が微笑んだ。
「では、特に断る理由もないので、お邪魔させて頂きます。私にも杏寿郎の事を教えてください。今日から鬼殺隊の同期だもんね。」
にこっと満開の花の様な笑顔を見せてお辞儀をしたが可愛らしくて杏寿郎の顔も自然と綻んだ。