第12章 口吸い
「杏寿郎。言いにくかったら答えてくれなくてもいいんだけど、私がもしも怯えた素振りを見せなかったら、その・・最後までしていた?」
杏寿郎は少し考えて答える。
「・・・答えにくい質問だな。いや、でもお互いの事だからきちんと話しておいた方がいいかもしないな。」
「を家に招待したときは指一本触れまいと思っていた。」
「が、すぐに口づけも抱擁もしてしまった。」
「でも、目合いは絶対に駄目だと思って自分を戒めている。」
「あれは、子供を作る行為だ。子供ができて負担がかかるのは女性だ。」
杏寿郎は少し間をおいて、の手をぎゅっと握り、話を続ける。
「俺が17歳になれば結婚できる。その頃まで俺を好いていてくれるなら結婚してから続きがしたい。」
は、杏寿郎の杏寿郎らしい答えに少しほっとして言う。
「私の事を考えてくれているのはよく分かったし、ありがたく思う・・・でも・・。」
「でも?」
「私、蝶屋敷のカナエさんから、行為の後に飲む子供ができなくなる薬をもらってるんだ。」
「む・・」
杏寿郎が驚いて固まっているので、は話を続けた。
「入隊して間もなくの頃、任務の後に呼ばれて渡された。誰かから私たちが一緒に住んでいることを聞いたからって。」
「人を好きになることや肌を重ねたいと思うことは悪いことじゃないけど、子供ができたらどうしても女性に負担がかかるからって。」
「だから・・・もし、次にどうしてもってなったら水を浴びに行かなくて大丈夫だから。っていうのは伝えておこうと思って。」
は言いながら、我ながら凄いことを言っているなと思い赤面した。
「でも、まだちょっと怖いし、杏寿郎が結婚してからって思っているなら、それに従う。」
「・・・いやはや。俺が知らない間にそんな話があったとは。俺が口吸いごときで浮かれていたのが恥ずかしい。」
「でも、もう、宇髄殿からその手の情報をもらって来ないで欲しいな。」
「承知した。」
外は少しずつ明るくなっていた。
「杏寿郎、眠れそう?」
「いいや全く。」
「私も。」
「・・・走りに行くか?」
「賛成。」