第10章 初任務
「口づけはこれくらいにしておこう。理性が飛びそうだ。」
「賛成です。」
杏寿郎は体をぱっと離し、隣に座りなおした。
「・・・少し眠る?」
「いや、まったく眠れる気がしない。」
「私、ほっとしたから少し眠いかも。」
「・・・・そういえば。・・・この手はどうした?」
の手に包帯が巻いてあることに気付き、杏寿郎がの手のひらを見た。包帯には血がにじんでいる。
「素振りしすぎてマメが潰れちゃった。」
はさっと手を引っ込めようとしたが、杏寿郎にしっかり掴まれてしまい、離せない。
「・・・よもや。も昨晩寝ていないのか?」
杏寿郎が大きな目での顔を覗き込む。
「・・・はい。正直に言うと、杏寿郎が出かけてから、家に戻って来るまでずっと素振りをしていました。」
あの目に見られては嘘がつけないと思いは白状した。
「眠れなかったか?」
は、優しい杏寿郎は自分のせいで眠れなかったと言うと気に病むだろうと考えて言わないつもりだったが、仕方なしに答える。
「このところ、いつも一緒にいたので・・。一人の時間をどう過ごしていいか思い出そうとしたんだけど、思い出せなくて・・。」
「任務に赴いている杏寿郎のことも心配で・・。何も考えなくていいように素振りを始めて・・・気づいたら杏寿郎が帰ってきていました。」
上目遣いになって、申し訳なさそうに言うの手を杏寿郎はぎゅっと握って言う。
「確かに俺もそうするかも知れないな。待っていると心配だからな。一緒に戦った方が気が楽だ。」
その日から杏寿郎とはおやすみの口づけをしてから手を繋いで眠るようになった。