第43章 再会
「お邪魔しています・・・。お父上・・・。」
槇寿郎の顔を見たの目からまた涙がぶわっと出る。
「やっぱり君か。待っていたぞ。ほら涙を拭きなさい。」
槇寿郎はにハンカチを渡す。
槇寿郎の横にひょこっと千寿郎が顔を出す。
「千!」
「姉上ー!」
お互いの顔を見て、2人で泣きながら抱きしめ合う。
瑠火がもしかしてという顔で槇寿郎を見ると、槇寿郎も頷く。
「瑠火さん。前世で杏寿郎の妻だった子だ・・。杏寿郎そっくりの孫も産んでくれたんだ。27で亡くなってしまったがな。杏寿郎とよく気が合っていて面白い子だぞ。」
「ほら、見てみろ。こんなことあるか?瑠火さん。」
槇寿郎は部屋の隅に置かれた2人の竹刀袋を指差す。
2人とも、完全オーダーの竹刀袋で、世の中に同じものは二つとないと言われるものだった。
作られた場所も、使っている年数も違うが、どちらも白い生地に赤で「気炎万丈」の文字と裾にアヤメの花の刺繍が全く同じ色で施してあった。
それを眺めながら、杏寿郎、やっと会えたな。と槇寿郎は呟いた。
杏寿郎が電話を持って戻って来た。渡された電話に出ると嬉しそうなの父の声。さすが杏寿郎。すぐに気に入られていた。
和やかな雰囲気で夕食を食べた。何度も目を合わせて目を赤くしながら笑い合う2人を見て、槇寿郎達も幸せな気持ちになり、目頭が熱くなった。
食事の後、杏寿郎がを車で家まで送って行った。また車の中でもは泣いた。もう自分でも何がスイッチで泣いているのか分からなかったが、とにかく幸せな涙がたくさん出た。
家に着くと、杏寿郎はにチュッとキスをして、抱きしめた。
「あぁ・・の匂いだ。」
「杏寿郎も・・・」
また2人でしばらく泣いて、次の日の約束をした。
そして、兄に挨拶をし、を泣かせてしまっていることを詫びて帰った。
ここからの二人は離れていた時間を取り戻す様に一緒に過ごした。
平日は仕事をしたり、剣道をしたり、トレーニングをしたり。
週末はあちこちに出かけ、前世ではほとんどなかった穏やかな時間を過ごして、たくさん笑った。