第43章 再会
煉獄家についた頃には何とか涙が止まっていたが、一目で泣いていたのが分かる顔だった。
ノーメイクに胴着に袴、ハイヒール。さらに杏寿郎のパーカーという凡そ彼氏の母親に会うような恰好ではなかったが、瑠火さんはを歓迎してくれた。優しい声でお風呂に入って来なさいと言われ、素直に従った。杏寿郎の目は槇寿郎さんよりも瑠火さん似だと分かった。
お風呂から出ると、杏寿郎も着替えて待っていた。隣接する道場のシャワーを浴びてきたらしく、髪が湿っていた。杏寿郎の左の頬が少し赤くなっている。
「頬、どうしたの?」
「母上に叱られた。女性を泣かせるとは何事ですか。しかも、遅くまで連れまわして、と。」
眉尻を下げ、少し困った様な顔をしてるが、目は笑っていた。
「母上の言うことは尤もだと思い、甘んじて罰を受けた。」
が視線を下げると、外にいるときは暗くてよく見えなかったが、喉に青く痣ができていた。
「・・・杏寿郎・・・喉。ごめんね。」
急に嬉しそうな顔になり、杏寿郎は言う。
「見事な突きだったぞ。奥義煉獄の初動作だな。どうやったか後で教えてくれ。あのスピードは初めて見た。突きで咳込んだのは初めてだ。」
、頑張ったんだな。と杏寿郎は優しく笑う。
「どうしても見せたかった。・・ごめんね。」
の目にはまた涙が浮かぶ。
ほら、風邪を引くから髪を乾かそう。俺は千寿郎の髪で慣れてるから上手いぞと、言いながら杏寿郎はドライヤーを持って来た。
の髪を慣れた手つきで乾かしながら、フランスは今何時だ?と問う。
「君のご両親に、との事を連絡したい。フランスに電話してもいいか?」
は驚いたが、あまりに杏寿郎らしいので少し笑いながら、涙ぐんでありがとうと答える。