第41章 試合
金曜日 部活動終了後
予告通り、と杏寿郎は剣道の試合をすることになっていた。二人で並んで防具を付け、定刻まで少し話をする。
「煉獄先生、突然試合なんて言ってすみませんでした。」
「いや、元は俺が試合の話をしたからな。」
「・・審判まで。」
「あぁ。剣道部の生徒も見ていいと言ってあるからな。審判がいた方が決め手が分かりやすいだろう?というか、審判がいないと勝負がつかんと思ってな。」
「・・・煉獄先生。では、折角なので本気でお願いします!」
はにこっと笑いながらすっと杏寿郎の方へ小手を出す。
「あぁ。勝負だからな。」
杏寿郎は出された小手に、上から自分の小手を下ろし、コツンと当てて、二ッと笑って返す。そしてコートの端と端へ移動する。
審判として呼ばれた3人は、全然変わっていない2人に半ば呆れていたが、試合自体は楽しみだった。
試合時間は5分。2本先取した方の勝ち。延長なし。
杏寿郎は赤 は白の襷を背中につけて目印にした。
主審は富岡。
一礼してコートに入り、蹲踞。構えただけで、空気が一変し、しんと静まり返る。
立ち上がり、2人とも中段に構える。
「始め!」
お互い、少し相手の出方を見る。
剣道部の生徒だけではなく、話を聞きつけたほかの生徒も見に来ている。全国大会で優勝する程の煉獄先生が、来たばかりの女の先生と勝負するのは皆、興味深かった。
剣道の決まり手は 面・小手・胴・突き のたった4つ。
いかに相手より速く正確に打つか。
2人は構えたまま、左右に体の位置を動かし、切っ先をカチカチと当てる。お互い、視線を合わせたまま隙が無いので、打ち込めずにいる。
は、杏寿郎は性格上、必ず初太刀は面を狙ってくると思っていた。
面を打とうと体が動いた瞬間に小手を打つつもりで、竹刀の先を動かしたり、細かく足を動かしながら面を誘った。
しびれを切らした杏寿郎が動こうと手首が少し浮いた瞬間をが捕らえる。
「バシッ!!」
の竹刀の先が、杏寿郎の小手に当たり、杏寿郎の眉がピクリと動く。
3人の審判は一斉に白い旗を上げた。
旗が上がったのを一瞥して、2人は中央に戻り構える。
一瞬、体育館は静まり返り、杏寿郎ではなく、が一本取ったことにどよめく。
「小手あり。2本目。」