第39章 確認
は自室のベッドに腰かけて竹刀を振りながら考えた。
天元の気持ちは分かった。私の事をまだ大切に思ってくれていることも、その気持ちは隠したいと思っていることも。
・・そして、少し時間が経てばすぐに私への気持ちは良い思い出として昇華されることも。
同じことを自分も杏寿郎に対して思っていた。自分ではない人の隣でも、愛した人が幸せに笑っている姿が見られればそれで満足だと。
前世の思いに引き摺られて、もしかしたら、自分のせいで傷つけてしまうかも、と思いながら一緒にいるよりは、このまま記憶のない振りをしていれば、いずれ杏寿郎は現世で見つけた大切な人と・・・・・
・・ダメだ。また逃げている。向き合おう、自分の前世と。
杏寿郎に嫌な思いをさせてしまうかもしれないことをしたのは自分だ。他の人を好きになったり、大切な我が子を他人に任せて死に急いだり、甘えて立ち止まっていたこともあった。
それに、少なくとも、杏寿郎とは何かしらのケジメを付けないと、彼が前に進めない。
だって、彼は私を待ってくれていたのだから。
でも、現世の杏寿郎は柔らかくて良い顔をしている。前世の・・・強い横顔から垣間見せる、美しい硝子細工みたいな・・・触れた所が悪いとすぐ欠けそうな不安定さは無い。
・・・それはそれで気高くて美しくて大好きだったが、やはり今の穏やかな横顔も・・・
気がついたら振っていた竹刀は止まっていた。目からは涙も出ている。
ふふふっと笑ってしまった。
なんだ。天元の言う通りだ。こんなにも会えて嬉しいと私は思っていて、杏寿郎の事ばかり見ているじゃないか。
本当に、ただ単に今は私を想ってくれているその気持ちが持続せず、幻滅されて嫌われるのが怖いだけだ。
何にせよ、もう命を取られるような事は無い。彼の顔はこれからいくらでも見られる。私が隣にいなくてもいい。