第39章 確認
は、前世の記憶のショックで食欲もなく、体がだるかったが、弱っていると勘付かれてしまうので、何とか食事をとり、月曜日は元気に出勤した。
記憶が戻るまでは気が付かなかったが、自分に向けられる視線が多い。
改めて見ると、教師も生徒も知っている顔が多く、皆が自分を心配してくれているのが伝わってきた。
が、視線に気づいていない振りをする事は難しく、神経を使った。
さらに、自身も杏寿郎や天元を見ていると、また会えたことが嬉しくて目頭が熱くなり、涙が出そうになる。無意識に「杏寿郎」と呼んでしまいそうになる。
なんとか月曜と火曜は乗り切った。
水曜日、に鍵閉めの当番が回って来た。教室や準備室に誰もいません様にと思いながら、足早にあちこちの鍵の確認をして回る。
美術室…いる。天元が絵を描いていた。
「宇髄先生。鍵閉めの確認に来ました。」
極力、平静を装って言う。
「はい、どーぞ。」
天元はチラッとを見たが、すぐにキャンバスに向き直る。
天元と二人きりのチャンスだが、どう切り出すべきか考えながら、窓の鍵を確認して回る。・・言い出しにくい。
全ての鍵が閉まった。
「では、お疲れさまでした。」
と、声を掛け教室を出ようとする。
フッと空気が動いたかと思ったら、天元はの前にいた。にこにこと笑いながら。
(あっさりバレているし、この顔の天元は怖い)
一応、驚いた顔で見る。
いつもの不敵な笑顔で話しかけてきた。
「さー。記憶戻ったんだろ?」
最初に話すのは天元と決めていたので、は覚悟を決めた。
「さすが。よく気付いたね。」
「月曜から少し様子が違ったからな。元旦那をごまかせると思った?」
「大方、飲み会の後に煉獄と喋ってたら何かのスイッチが入ったんだろ?」
天元はひょいっとを抱え、モチーフ台に座らせ、向き合う様に自分も座る。
「おぉ、相変わらず腰が細ぇな。」
「・・天元に抱えてもらうの、懐かしいね。」
余裕があるように返事してみる。
「で、何で記憶が戻ったのを隠そうとした?」
「まず最初に天元と、二人で話がしたいと思って。」
「どんな?」
「私が死んでからの事。後、今生のこと。」
「・・まぁそりゃ気になるわな。」
「いいぜ。俺の知っていることを話してやる。」