第38章 葛藤
杏寿郎の事を大好きで愛していて、彼のためなら命なんて惜しくないというくらい大切に思っていた。いつも太陽みたいに笑っている杏寿郎と一緒にいた、楽しくて幸せな思い出ばかりの6年間。
本当なら、今すぐにでも会いに行って、あのルビーのような瞳を見ながら、大好きな声を聴きたい。でもそれができないのは前世の私の心の弱さ。
私は、杏寿郎が死んでしまうと、薄情にもすぐに天元の所へ行った。
杏寿郎の希望もあったし、天元も私を想ってくれていた。でも、そんなのは関係なく、最終的にそれを選んだのは私だ。
天元とは、最初こそ義理の気持ちも強かったが、一緒にいるうちに愛情も湧いてきたし、肌を重ねたのは杏寿郎とよりも天元の方が多かった。
私が辛い時に傍にいたのは天元だ。慰めてくれたり、怒ってくれたり、たくさん笑わせてくれた。
私だけじゃなくて、血のつながっていない桜寿郎にも自分の子の様に接してくれた。ずっと私を大切にしてくれたのに、私が先に死んでつらい思いをさせてしまった・・・。
その晩、は一睡もできず、次の日が土曜であって良かったと心から思った。
今後、杏寿郎と天元とどう接するか。土日で考えたが良い案が浮かばない。
そもそも、また、恋愛関係になるような状況なのか、気の合う同僚として楽しく過ごしていくのか・・・。
どちらにしても、まず、自分のせいでつらい思いをさせてしまった天元と話がしたい。
記憶がまだ戻っていない振りをしながら、天元と二人で話ができる状況を待つことにした。