第31章 夢
声も枯れ、涙も出なくなった頃、くすんくすんと鼻をすすりながらウトウト眠った。
天元はずっと何も言わず、の頭を撫で続けた。
は杏寿郎の夢を見た。
杏寿郎が夢に出てくるのは初めてだった。
心配そうにを見ている。そして、優しく手を握って言う。
「。先に死んでしまってすまない。俺のせいで泣かせてすまない。寂しいだろう。辛いだろう。」
「でも、俺の心は君の傍にある。君は強い。猗窩座を倒せ、他の上弦の鬼を。鬼舞辻無惨を。」
「戦いの無い世でまた会おう。まだこっちへは来るな。は泣いている時よりも、笑っている時の方が強い。」
「さぁ。君が次にすべきことは何だ?」
は杏寿郎の手を握り返す。
「私は、あなたよりも強くなる。」
「そうだ。ちょっと悔しいが、俺はそれも楽しみにしている。」
の大好きな杏寿郎の笑顔で言う。
「・・・あと、宇髄を愛してやれ。俺の分まで。彼もまた君の人生に彩をくれる。」
杏寿郎がの手の甲へ口づけをする。
そこで、は目が覚めた。顔を上げると天元が優しい紫の目で見ていた。
「少しは気が済んだかよ?」
外はもう真っ暗だった。