第30章 お見舞い
次の日の昼下がり、は桜寿郎を連れて天元の屋敷へ見舞いに来た。
天元は3人のお嫁さんに看病してもらっていたが、が来るとお茶を出してくれた後、3人とも屋敷から出たのか気配が消えた。
は用意されていた布団に桜寿郎を下ろし、天元の近くへ行き座った。
「天元、ケガの様子はどうですか?」
ピリピリした雰囲気だったので、から話しかけてみた。
「少し痛ぇが、大丈夫だ。は?」
「腕は縫ってもらったので、大丈夫です。背中はほぼ打撲なので問題ありません。」
「・・・・そうか。」
「・・・・。」
「今日来てもらったのはに聞きてぇことがあるからだ。」
「・・・何でしょうか?」
「昨日の戦いには雛鶴が呼んだってことは聞いた。」
「はい。ねずみが来ました。」
「問題は戦い方だ。お前、死のうと思って戦っただろう?」
「・・・。・・・。」
気まずい沈黙が流れる。勘付かれているなら隠しても仕方が無いと思い、口を開く。
「駆け付けた時は死ぬ気はなく、家で知らせを待つよりはいいと思って行きました。でも、天元が毒で死んでしまいそうだったので、鬼を倒した後、一緒に死んでもいいなと思いました。」
「任務に行く前にお前とした『生きて帰る』って約束を破りそうだったことは詫びる。が、俺が死ぬこととが死にたがることは関係ねぇだろう?」
「生きていることが辛いんです。」
「私の心の殆どを占めていた杏寿郎もいなくなって、少しずつ私の心に入って来た天元もいなくなるなら、もういいかと。」
「杏寿郎の心は炭治郎達が継ぎました。私は杏寿郎の子どもを産み、命を繋ぎました。杏寿郎の心を継いだ彼らを守れるのならもう命を懸けてもいいと思いました。」
「それに・・・天元も毒を受けて死にかけたのは同じ。」