第28章 見送り
ある日、いつもの様にと桜寿郎の様子を見に天元が来ていた。
桜寿郎は天元の顔が分かるようになってきており、天元がにーっと笑うと一緒にニコニコする。
はその様子を気にしながら、庭で技の鍛錬を行っていた。天元は時折、動きに対しての助言を出しながら、ずっと桜寿郎と遊んでおり、キャッキャッと笑い声まで聞こえるようになった。
天元が帰り際に、の横に座り頭を撫でながら顔をのぞき込む。
「。俺は明日から、また遊郭に鬼退治に行ってくる。少しの間潜入もするから、しばらくは会いに来れねぇ。」
「はい。分かりました。お気をつけて。」
「・・・なんかもっと、寂しいとかないわけ?」
は、少し考えて言う。
「天元・・・分が悪そうだったら、その時は呼んで欲しい。」
「お前。もっと色っぽい反応はねぇのかよ!」
「色っぽい・・・例えば?」
「こう、首に腕を回してだな。口づけして『気を付けて』とかな。」
天元が少しおどけながら言うのをはじっと見ながら聞いた。
「…天元。今まで任務に行くときにそんな事言ったことなかった。今回は本当に分が悪い?」
天元は余計なことを言っちまったと思いながら、渋々話す。
「・・・上弦の可能性がある。先に潜入した嫁3人からの連絡も途絶えた。吉原で何が起きているか分からねぇ。」