第27章 退院
入院している時に、実弥が来た。
蝶屋敷へ来たついでだと言いながら、遠くのお店で買ったおはぎを持ってきてくれた。
「しっかり栄養とれよ」と言いながら。
そしてひたすら桜寿郎を抱っこしてかわいがってくれた。
桜寿郎のあごや頬をむにむにしたり、足の裏をこちょこちょしたり、匂いを嗅いだり、桜寿郎の掌を自分の瞼や頬に当てたり、指を握らせたり・・・
永遠にやり続けるのではないかと思うくらい堪能しているのを、は頂いたおはぎを食べながら眺めていた。
ひとしきり楽しむと、やっとの方へ向いた。腕には桜寿郎を抱いたままで。
「体は大丈夫か?」
「はい。お陰様で。おはぎおいしかったです。実弥殿は子どもがお好きなんですね。」
実弥にもおはぎとお茶を差し出すと、ぺろっと食べた。
「あぁ、俺は長男で弟や妹が多かったからな。」
そういえば実弥殿の小さな弟妹達は鬼に殺されれたと聞いたことがあるなと思った。
みんな辛い思いを乗り越えてきている。・・・どうやったら乗り越えるだけの強さが持てるんだろう?
「もう少し大きくなったら、桜寿郎にかぶと虫見せてやってくださいね。」
「いいぜ。一番でっかいのをやる。」
「いや・・・家で飼うのはちょっと・・・」
「あぁ?なんだと?」
実弥は帰るギリギリまで桜寿郎を抱っこしていた。
「また、家に見に来てください。」
とが言うと、
「あぁ。また行かせてもらうわぁ」
ニッと笑いながら、手をひらひらさせて帰っていった。