第25章 父上
杏寿郎が亡くなってから、天元が頻繁に様子を見に来るようになった。彼はどうしてこんなにも人の世話を焼きたがるのだろう。
いつも他愛もない話をして、時には私の鍛錬につきあい、いつも私の頭を撫でて帰る。
ある日、また天元が私の様子を見に来ていた。
天元の話をにこにこしながら聞き、ぼんやりと彼の綺麗な紫を見ていたら、ズキン・・・ズキン・・・と異変が起きた。
ズキッズキッズキッズキッ・・・子宮が脈打つような感覚。耐えられる痛みだが、少し苦しい。
「天元・・・、私、お腹痛いかも・・・。」
は実家が無いので、蝶屋敷で出産することになっていた。
「じゃあ連れてってやるぜ。」
と抱えて連れてってくれた。
蝶屋敷につくと処置室に移され、もういつ生まれてもおかしくない状況だと聞かされる。
天元は外に出された。は慌ててお礼を言う。
「て、天元・・巻き込んでごめん。産まれたら鴉を飛ばすね。」
「はぁ?俺産まれるまでここにいるぜ?こんなん呑気に家に帰れるかよ。」
「えぇ・・」
「え・・じゃねえよ。頑張れ!」
頑張れと言われても・・・と思いながら産婆さんの話を聞く。
子宮が時々ぎゅっと痛む。
痛みに合わせて少しづつお腹に力を入れるようだ。
痛いのには慣れているので大丈夫なのだが、痛み以外の不快感が嫌だった。
子宮の収縮に合わせて少しずつ力を入れていくと、何かが出てきている感覚がある。
「んっ・・・」
自然とうなり声が出てくる。
産婆さんに言われるがままに力を入れる。
「んーーっ」
しばらく激しい痛みが続いた後、
「・・おぎゃーおぎゃー」
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
元気な声を聴いては、ほっとする。
びっくりする位煉獄家の遺伝子は強く、杏寿郎そっくりの赤ちゃん。金色の髪に大きな赤い瞳。手足も大きくてがっしりしていて力強い。
「は・・初めまして。桜寿郎・・。」