第21章 報告
それからの杏寿郎は前にも増しての体を気遣い、お腹の子を愛でた。
少しずつ膨らんでくるのお腹が愛おしくて仕方がない様子で、2人で部屋にいると大体、の腰に抱きつき、お腹の音を聞いたり、さすったり、話しかけたり・・・。
「私、まだ子を産んでないのに、もう大きな息子がいる・・・。」
とが呆れるほどだった。
「お腹の子の名を考えたんだ。桜の字で桜寿郎はどうだ?」
「桜。良いね。でも、桜の花は散ってしまうよ。」
「散るが、毎年咲く。俺の杏子の花もそうだ。美しい花を咲かせるために準備し、寒さに耐える。そして花を咲かせて人を楽しませる。」
「毎年、皆が今か今かと咲くのを楽しみにして集まってくれる。」
「杏寿郎に似た子になりそうだね。」
「女の子なら?」
「あやめはどうだ?君の羽織の花だ。美しいだけでなく、どこにでも咲く強く逞しい花だ。薬にだってなるそうだ。」
「可愛いね。でも・・・そもそも、女の子は生まれるの?」
「俺の知る限りでは煉獄家に生まれるのは男ばかりだ。代々鬼殺の家系だからかも知れん。」
「でも、君の様に強い母からなら女子が生まれてくるかもしれんな。」
「俺に似た子も良いが、君に似て美しい子も可愛いだろうな。」
「お、お腹を蹴っているぞ。名前が気に入ったようだな。この子は賢いな!」
杏寿郎はのお腹に手を置いて嬉しそうに言う。
は、これでは先が思いやられると思いながらも、可愛い杏寿郎の頭を撫でた。
「む・・・君が撫でているのは俺の頭だが?」
「今はこの大きな息子が可愛くて・・・」
子が生まれるのを待つこの頃が杏寿郎とが一番幸せだった頃かもしれない。