第1章 出会いと変化
と同時に、一つ疑問が浮かんだ。
「明日から……ですか?」
「そうだ。」
「明日出発なのに、今日の夜、
うちに食べに来てくれたってことですか?」
「そうなるな。」
「……なんか、すごい嬉しいんですけど。」
自然と自分の顔が熱くなるのを感じる。
この人が戦いに出る前日に、
自分の作った料理を食べたいと思ってくれた。
自分の料理を選んでくれた。
心が暖かくなる。
喜びが込み上げる。
この気持ちは何なんだろう。
「……戦いの前日だからこそ、
力が出る物が食べたいだろうが。」
リヴァイさんの言葉が優しくて
ありがたくて、嬉しいのに、
何でか泣きそうになる。
「ありがとうございます。」
喋ったら、涙が出てきそうで、
やっとそれだけ言った。
「無事帰ったら、また来る。」
「待ってます、というか、
私がそっちに行きます。」
思わずそう言ってしまった私の顔を見る、
明らかに唖然としたリヴァイさんの顔。
初めて見る表情だ。
「………そっちに行く?何の話だ。」
「調査兵団の料理人として働けるように
試験を受けようと思います。」
そんな言葉が自分の口から出たことに、
自分が一番驚いている。
調査兵団の食堂は、
栄えている内地と程近い場所にある。
そんな上流階級の人も多く住む街で、
私のような一般市民が働くことは、かなり難しい。
特に兵団専属の料理人は給料も良く、
試験も難しく、勿論倍率も高い。
「試験、受かって見せるんで、
次は調査兵団の食堂で会いましょう。」
ここでの生活に
ピリオドを打とうと思ったことは
ここに来てから一度もなかった。
むしろずっとここにいたいと思っていた。
自分の居場所はここしかないと思っていた。
でもリヴァイさんの言葉を聞けて、
自分でも驚くほど考えが180度変わった。
私は必要とされていたいんだ。
それに気付いた。
「……悪くない。」
一瞬、リヴァイさんが笑ったように見えて
驚いて目を擦る。
気のせいか。
いや、気のせいだろう。
団長でさえ、兵長の笑顔なんて
見たことないって言っていたんだから。
「楽しみにしてる。」
リヴァイさんの言葉が、
自分の意思をますます強くさせる。
絶対調査兵団の食堂で働いてやる。
眠っていた自分の欲望みたいなものが
ふつふつと湧きだしてくるようだった。