第15章 激しい動悸の原因
「エルヴィンさんの気持ちが
嬉しいとは思っても、
それがエルヴィンさんと
同じ気持ちであるかどうかっていうのは
よく分からないんです。」
エルヴィンは黙ってエマの話を聞く。
「でも、このままエルヴィンさんと
気まずくなるのは嫌なんです。
ここでエルヴィンさんと離れたら、
もう、前みたいに一緒に笑うことは
できなくなりそうで」
「エマ。」
エルヴィンは優しい声で
エマの言葉を遮る。
「ありがとう。
その気持ちが聞けただけで十分だよ。」
エルヴィンはエマの右手を
そっと握った。
「……だが、これ以上ここにいたら
また有無を言わさず
抱きしめてしまいそうだ。」
エルヴィンがそう言って小さく笑うと、
「……いや、
それも突然でかなり困惑しましたけど
嫌とか、そういうのじゃなくて」
エマがそう言いかけたところで、
エルヴィンは強くエマを抱きしめた。
「それ以上は聞かないでおこう。
嫌ではなかった、
と言うことでいいんだな?」
エルヴィンの声はエマの耳元で
心地良く響く。
「……君とずっとこうしていたい。
君とずっと共にいたいと心から思うんだよ。
私の気持ちは単純にそれだけだ。」
エルヴィンの言葉は、明確で分かりやすい。
エマは自分のことをこれだけ想ってくれて、
必要としてくれる存在に出会うのが
初めてだった。
「……ありがとうございます。」
やっとそれだけ言うと、
エルヴィンの腰に手を回す。
この人と一緒にいることが
自分の幸せなのかもしれない。