第15章 激しい動悸の原因
「昨日は驚かせて悪かったね。」
エルヴィンは俯いた。
「君といると、どうしても気持ちが
先走ってしまうようだ。」
エマはエルヴィンの
今まで見たことのない表情に、
何と声をかけたらいいのか分からず
口に手を当て、沈黙する。
「……エマを他の誰かに
取られたくないと思ってしまうんだよ。」
エマは風邪のせいではなく
エルヴィンのその言葉に、
自分の鼓動が速く刻まれるのを感じた。
エルヴィンは自分を必要としている。
その事実を、純粋に嬉しく感じる。
だけど、この気持ちを
エルヴィンと同じ気持ちだと
言ってもいいのだろうか。
「……すみません、なんか、混乱して。」
エマは一旦考えることをやめると、
それだけ言って、また口を噤んだ。
「いや。いいんだ。
私も後先考えずに行動してしまって
今は少し後悔している。
……もっと、エマの気持ちを
考えて行動するべきだったな。」
エルヴィンは立ち上がる。
「少し頭を冷やしてくるよ。」
そう言ったエルヴィンの服を、
エマは掴んだ。
「あの、待ってください。」
「………そうじゃないんです。
エルヴィンさんの気持ちは、
素直に嬉しいんです。」
エマは頭の中で気持ちを
整理しながら話す。
「……でも、その、お恥ずかしい話ですが、
私、恋愛経験がないんです……」
エマは俯いた。