第126章 雑務の手伝い
『しまった……
今日に限ってほうれん草のキッシュか……』
今持ってきているカトラリーはスプーンだけだ。
キッシュは大体の兵士が手づかみで食べるので、
フォークは用意していなかった。
だが、下が硬めのタルト地のキッシュを、
スプーンで切り分けるのは難しい。
「あの……
キッシュは自分で食べますか……?」
エマはそれしか方法はないと思い、
エルヴィンに問いかけた。
だが、返って来たのは
「ん?君が手掴みで
食べさせてくれたらいいよ。」
と言う、エルヴィンからの
予想外の一言だった。
「え、いいんですか?」
「ああ。」
戸惑っているエマの確認に
エルヴィンは即答すると、
書類に目を向けたまま、再び口を開ける。
エマは二口程で食べられるように
切り分けてあるキッシュの一つを
エルヴィンの口に持って入れた。