第116章 一番必要な人
訓練場の近くを通った時、
水飲み場で水を飲んでいるリヴァイと
柵越しに目が合う。
「リヴァイさん、お疲れさまです。」
何も声を掛けない訳にもいかないと思い、
エマは少し大きめの声で呼びかけた。
リヴァイは何も言わず柵に近付くと、
「おい。何泣いてんだ?」
そう言ってエマの目を見入る。
エマは焦ったように顔を触ると、
自分の頬が濡れていることに気付いた。
『泣いたつもりなかったのに……』
心の中で、自分の涙腺の緩さに呆れる。
「あ、さっき、
菜園で草むしりしてたんですけど、
ちょっと目に土が入って」
そう言いかけたところで、
リヴァイが柵を越えてエマの隣に来た。
「お前はいつから、そんなつまらない
嘘が吐けるようになったんだ?」
リヴァイはそう言いながら眉間に皺を寄せる。
「……いや。すみません。
でも何でもないんです。ほんとに。」
気が動転して、少し言い回しがおかしくなるが、
エマは気にせず話を続ける。
「リヴァイさん、訓練途中ですよね?
戻った方がいいですよ。」
「もう訓練は終わった。」
リヴァイはそれだけ言うと、
肩にかけたタオルをエマの頭に乗せた。