第10章 エルヴィンの想い
エルヴィンの部屋に入るなり、
「あんな地震があった後でも、
この本棚達はこの場所なんですね。」
エマはそう言って、天井近くまで
そびえ立つ本棚に目を向けた。
「こればっかりは片付けられないからね。」
エルヴィンはそう言いながら
書類の束を机に置き、
「ハンジから何の本を頼まれたのかな?
高いところにあるのなら、私が手伝おう。」
と、エマに声をかける。
「あ、本の場所はハンジさんから
聞いているので、大丈夫です!
高いところですけど、脚立もありますし。」
エマは脚立を机の横にある
本棚の前に移動させる。
「……エマは、本当に何でも
一人でやってしまうね。」
エルヴィンは書類に目を通しながら、
話しかけた。
「些細なことだけれど、
もう少し頼ってくれてもいいんだよ?」
エルヴィンの優しい声掛けに、
エマは心が温かくなるのを感じる。
「……ありがとうございます。
もっとピンチな状況に出くわしたら、
助けてもらってもいいですか?
あの地震の時みたいに」
そう言いかけると、
エルヴィンに抱きしめられた時のことを
思い出し、言葉に詰まる。
「……あの時は、
私の方が甘えてしまっていたからね。」
エルヴィンは書類から目を離し、
エマの方を見た。
「いや、あの。私は特に何も……」
エマはそう言いかけて、
誤魔化すように急いで脚立に上る。
「……エマを抱きしめると、
気持ちが落ち着くんだよ。」
エルヴィンの言葉に鼓動が早くなるのを感じ、
思わず右手で胸を掴んだ。
「団長が楽になったんなら……
こんな私でも役に立てたんなら、私は……」
そう言いかけて、自分が脚立から
足を踏み外したことに気付く。
落ちる!
と思った先には、エルヴィンの身体があった。