第9章 ジャンの葛藤
「……エマさんって、
ほんと変な人だな。」
「え、今の話の感想がそれ?」
エマは思わず突っ込む。
ジャンは顔を上げ、
「なんか、俺、変だったな。
らしくなかったわ。ごめん。」
そう言って腫れた目で、
エマに笑いかけた。
「らしくない、ってこともないけどね。
そうやって人のことも自分のことも色々考えて
パンクしちゃうとこだって
ジャンらしいと、私は思うけど。」
エマはそう言って、笑い返すと、
「……なぁ、これから
誤解されるようなことするけど、
文句言うなよ。」
ジャンはそう言ってエマを強く抱きしめた。
「なになに、私誤解しちゃうんだけどなぁ。」
エマは茶化しながら
ジャンの頭を撫でる。
「……じゃぁ勝手に誤解しとけよ。」
ジャンの声は、いつもの調子に戻っていた。
「……借りは一つ返せたのかな?」
「……まぁ、一つはな。
まだもう一つあるけど。」
ジャンの意地悪な答えに、
「そうか。
ならこの状況を口外しないことで、
もう一つの借りを返したことにしてもらうぞ。」
背後からの突然の声に、
焦って後ろを向くエマ。
ジャンは両手を素早く上げて、
その場に固まった。