第9章 ジャンの葛藤
すると、
「……エマさん。
あの、願い事聞いてくれるってやつ。
まだ有効だよな?」
そう言ってジャンはエマの目を見つめる。
「何か私に力になれることがあった?」
エマがジャンに笑いかけると、
ジャンはエマの肩に顔を伏せた。
「……ジャン?」
「いいから、黙って肩貸せよ。」
ジャンの声は今にも泣きそうだった。
エマは何も言わず、ジャンの髪を撫でる。
ジャンはそんなエマに話し始めた。
「俺の同期にさ、
マルコってやつがいたんだけど。」
ジャンの少し震えた声が、
エマの耳元を掠める。
「今はもう死んでいないんだけどな。
今日が命日だから休みの日だし、
墓参りに行ったんだよ。
まぁ墓参りっつっても、骨もねぇ墓に
なにを参るんだって話だけどよ。」
そう言って鼻を啜りながら、
いつもより早口で喋るジャンの髪を、
エマは静かに撫で続けた。
「そしたら、マルコの親に会ったんだ。
それで、マルコの親に、
マルコがしてた俺の話聞いた。
俺のこと、べた褒めしてる話を聞いたんだよな。
もう、恥ずかしくってさ。
……あいつは俺のこと買被りすぎなんだよ。」
「……俺はそんな
大そうな人間じゃないんだ。」