第100章 勘繰りたくもなる状況
その日もエルヴィンと会うことは出来ないまま、
調査前日になった。
エマは朝から保存食の確認と、
夜の宴のための準備で忙しく過ごしていた。
昼時が過ぎた頃、
エマは食堂の隅の席に座り、
ため息を吐く。
「あー、やっと少し落ち着いた……」
思わずそう呟いたとき、
「エマさん、お疲れさま。」
ジャンがエマの横の席に座った。
「ジャン。お疲れさま。訓練は?」
「とりあえず、今は休憩中。
でも今日は早めに終わるよ。
あとは講堂で陣形の最終確認だけ。」
ジャンは背伸びをすると、机に顔を伏せた。
「……いよいよ明日なんだけど。」
「そうだね。」
「何回行っても。前日は緊張が半端ないな……」
「そうだろうね。」
「まぁ頑張るしかないんだけど。」
「そうだね……」
「おい!エマさん、
ちゃんと話聞いてないだろ!?」
あまりに淡々としたエマの返事に
ジャンは顔を上げて声を荒げ、
エマの方を見た。
エマはそっとジャンの頬に
手を添えると、
「ジャンが生きて帰ってきますように。」
そう言って、軽く唇を重ねた。