第94章 後悔の無いように
「エルヴィンは、上手いのか?」
急に生々しい質問を投げかけられ、
エマはまた頬を赤く染める。
「……あの、面白がるのやめてくれませんか?」
「お前は、エルヴィンに抱かれて、
どんな風になるんだ?」
「だから、そんなこと聞かれても」
エマはそう言いかけて、
リヴァイの表情の異変に気付いた。
「……何でそんな悲しそうな顔するんですか。」
そう言われて、
リヴァイはエマから目を逸らす。
「リヴァイさん、
気付いてないのかも知れないですけど
私といる時、たまにその表情してますよ。」
エマはリヴァイを見つめたまま言う。
「そんな表情になるくらいなら、
聞かないで下さいよ……」
エマは思わずリヴァイの頬に
触れそうになるが、
ギリギリのところで手を止めた。
ここでリヴァイに触れたら、
感情が止まらなくなる。
今でさえ自分の衝動を抑えるのに必死なのに、
これ以上自分の感情を
自ら掻き乱すような行為は控えるべきだ。
「お前からは、俺に触らないんだな。」
リヴァイは自分の頬近くで止まったままの
エマの手に目を向けた。
「……それ、どういう意味ですか?」
エマの問いに、
リヴァイは何も答えない。
「私に触って欲しい、って意味なんですか?」
少し顔を伏せたリヴァイは、
感情を隠すかのように、そっと目を瞑った。
……私の感情を掻き乱すのは、
この表情が原因だ。
リヴァイのこんな顔は見たくない。
エマは一旦手を降ろすが、
堪えきれず、リヴァイの頬に手を当てた。
「もうそんな顔、しないで下さい……」
リヴァイは意表をつかれ、目を見張る。
「エマ。
俺もお前に触れていいか?」
「……初っ端から、かなり触られてますけど。」
エマはリヴァイの頬に手を当てたまま
少し笑った。
「それは、いい、と言うことか?」
リヴァイの真剣な瞳を見つめ返し、
「……いいですよ。」
と、だけ答えた。