第94章 後悔の無いように
その時、
窓の外に、エルヴィンの姿が見えた。
エルヴィンの正面には
調査兵団の団服を着た、
金髪の女性が立っている。
きっとこれは、
見るべきものじゃないだろうと思い
目を逸らそうとした瞬間、
エルヴィンの手は
その女性の頬に優しく触れ、
ゆっくり唇が重なった。
「おい。」
リヴァイは突然黙り込んだエマに呼びかけ、
少し身体を離す。
そして放心しているエマを見て、
思い立ったように後ろを振り返った。
「実際見てしまうと、結構堪えますね……」
窓の外の状況に気付き、
言葉を噤むリヴァイに、
エマは呟くように言った。
目を逸らす前に、
目を瞑ってしまえば見えなかったのに。
そんなことを今更考えて後悔する。
「まぁ、でも私も同じようなことしてるので、
傷付いていい立場でもないんですけど。」
そう言って
ため息を隠す様に笑うエマの手を
リヴァイは強く引き、座らせた。