第93章 願掛け
「……良かった。」
エレンはそう言うと、安堵のため息を吐く。
「拒絶されたらどうしようかと
思ってたんだよ。」
「何で拒絶されると思ってたの?」
「……この前、酔って抱き着いて
キスしたんだろ?俺。」
エレンの発言を聞き、
エマはあの時のことを思い出した。
エレンの唇は、柔らかく滑らかで、
初めてのキスを連想させるような感触だった。
そんな事を考えていたせいか、
顔が熱くなるのを感じる。
「まぁ、酔ってたから仕方ないよ……」
エマはエレンの背中を
ポンポンと叩いた。
「……ほんと、ごめん……」
エレンの耳が、さっきよりも、
もっと赤くなっていることに気付き
エマは思わず吹き出した。
「エレン。そんなに気にしないで。
私も気にしないから。」
「……ほんとに気にしてないの?」
エレンはそう言うと、
エマを少し離し、目を見つめる。
「気にしてないよ……?」
エマはエレンの
食い入るような視線に耐えきれず、
思わず目を逸らした。