第88章 勝負の行方
「なに?お姉さん、喧嘩強いの?」
「いえ、喧嘩は無理です。」
エマは即答すると、
ポケットからトランプを取り出した。
「これで、勝負して下さい。」
長身の男は、エマの突拍子のない
提案を聞くなり、盛大に吹き出すと
「え?俺たち見て、
それで勝てると思ったの?
これでもギャンブルで
生活してたりするんだけど。」
そう言って、
見下したような笑い声を上げる。
下品な笑い声が耳に付いたのか、
リヴァイのあからさまな憤りを、
エマは隣で感じていた。
「やってもいいけど、
俺らが勝ったら、お姉さん、
一生俺たちの奴隷してくれる?」
小太りの男は、エマの身体を
舐め回すように見る。
エマはこの男との情事を一瞬思い浮かべるが
溢れる不快感で吐き気をもよおしそうになり、
すぐに想像を中断させた。
だが、
「はい。
一生、精一杯奉仕しますよ。」
そう言って、誘うような目付きで、
小太りの男に少し詰め寄って見せる。
「おい、エマ!
滅多なこと言ってんじゃねぇぞ!」
リヴァイは声を荒げ、
エマの肩を強く掴んだ。
エマはリヴァイの言葉も行動も無視し、
「それじゃ、私が勝ったら、
黙って階段降りてもらっていいですか?」
そう言って男たちに笑いかける。
「いいよ。逆立ちでもして降りてやるよ!」
髭の男は、笑いながらそう言うと
その場に座り込んだ。
その立ち振る舞いからは、
有り余る自信が覗える。
「ありがとうございます。
ポーカー、ブラックジャック、バカラ……
何でもいいですがどうします?」
「ポーカー、1対1で3回勝負。」
髭の男はニヤリと笑う。
「分かりました。
交渉成立ってことで。」
エマは即答した後、髭の男と握手をし、
再び湿った手に不快感を覚えつつも
その場にゆっくり座った。