第88章 勝負の行方
「フォーカード。
また私の勝ちですね。」
エマはKのマークが並んだトランプを見せながら、ニヤリと笑う。
「次が最後の一人ですけど、
違うゲームに変えてもいいですよ?」
そう言うエマの余裕な表情に、
小太りの男の顔は一気に赤面する。
どうやら怒りが身体全体に浸透したようだ。
「お前、ふざけんじゃねーぞ!
イカサマしてんじゃねぇのか?!」
小太りの男は唾を撒き散らしながら、
エマを怒鳴りつけるが
エマはそれを少しも気にする
素振りを見せず、
「女相手に恥ずかしくないの?」
と、小太りの男の腕を素早く掴んだ。
「イカサマしてんのは、どっち?」
エマがそう言うと同時に、
小太りの男の袖口から
トランプが数枚零れ落ちる。
トランプが袖から出切った頃
男の脂肪で膨れ上がった顔からは、
赤みが引いていた。
「おい、イカサマヤローは
半殺しで良かったか?」
リヴァイはそう言って
小太りの男の頭を掴み
階段に打ち付けようと、
勢いよく頭を持ち上げる。
リヴァイの表情は、無機質で、
何の色も感じられない。
小太りの男の悲鳴が、
高らかに宙を舞った。
「リヴァイさん、残念ながら
イカサマで半殺しの協定は
組んでなかったので、それはマズイです。」
エマは心底残念そうな声で、
リヴァイに言う。
リヴァイはその言葉に反応して、
男の頭を階段に打ち付ける直前で手を離した。