第87章 最善策
「リヴァイさん!
剃刀、見つかりましたか?」
店に入り、
別の物を探していたエマは
リヴァイに声をかける。
リヴァイは店内を歩き回る訳でもなく、
高い棚の前で立ち止まり、
何かを考えている様子だった。
エマの問いかけには、
「いや。見つかる気がしない。」
と、それだけ言って
面倒臭そうなため息を吐くのみ。
見つかる気がしない、と言うよりも
見つける気がないようにも見える。
エマはそんな覇気のないリヴァイを見て
思わず笑うと、
「ちょっと、
さっきまで一人の方が効率いい
って言ってたリヴァイさんは、
どこに行ったんですか?」
そう言ってリヴァイの服の裾を引き、歩き出す。
「……これはこれで、なかなか悪くないな。」
「何か言いましたか?」
「いや、何でもない。」
リヴァイは少し笑うと、
エマの手を握った。
繋いだ手から、リヴァイの体温が伝わる。
ずっとポケットに手を入れていたせいなのか、
リヴァイの手は、温かいと言うよりも、
熱いに近い。
その熱に、エマは少し鼓動を高鳴らせる。
そして、リヴァイの顔をそっと盗み見ると、
「なんだ。服を引いて歩くより、
こっちの方が体裁がいいだろ。」
リヴァイはそう言って、
エマの顔を覗き込んだ。
「……誰かに見られても知りませんよ?」
「俺は問題ない。」
リヴァイの即答に
エマが少し顔を赤くすると
「おい、しっかり案内してくれよ。」
そう言って、また歩き始めた。
リヴァイのこの急な提案は、
破棄するべきだと頭では理解しているのに
そうできない、そうしたくない自分がいる。
リヴァイに手を引かれながら、
エマは自分の心の緩さにため息を吐いた。