第6章 リヴァイと倉庫で
「私、幼いころから、
あのリヴァイさんが来てくれた店に
いたんですけど、
あの家の店主が私の実の親ではないんです。
生みの親が、別にいます。」
「その生みの親と暮らしていた時に、
よく、こんな暗い倉庫に
一人で閉じ込められたんですよね。」
エマは軽く深呼吸をして続ける。
「………生みの親の記憶なんて、
もう無いに等しいのに、
その、閉じ込められた記憶だけは
鮮明に残っていて。
まぁ虐待されて保護されたことは
育ての親から聞いてたんですが。」
「この年になって、未だに暗闇で
そんなことを思い出して怖くなるなんて
ほんと、情けないし恥ずかしい話な」
そう言いかけた時、
エマはリヴァイに強く引き寄せられた。
「………リヴァイさん?」
エマはリヴァイの腕の中に
いることに気付く。
「……あの、
これはどういう状況でしょうか……」
何が起きたのか分からず、
とりあえず冷静にリヴァイに尋ねた。
「俺がその記憶を差し替える。」
エマは耳元から聞こえるリヴァイの声で、
自分の体が熱くなるのを感じる。
「お前は暗闇の中、
一人で閉じ込められている記憶しかないんだ。
それなら俺がこうすることで、
暗闇の中でも一人じゃねぇことが分かるだろ。」
エマは体だけでなく、
自分の目頭が熱くなるのも感じた。
「お前はもう一人じゃない。
ここには俺がいる。」
リヴァイの声は優しかった。
その優しさに安堵し、
エマの頬には自然と涙が伝う。