第1章 出会いと変化
「……このスープ……悪くない。
何か特別なもんを入れてるのか?」
リヴァイ兵長は心底不思議そうな表情で
私の顔を覗き込んだ。
眼つきが悪い。というか、怖い。
私、睨まれてる?
でも、これは褒めてくれてるのか?
心の中でいろんな感情がぐるぐると巡る。
「おい、聞いてんのか?」
「はっ、はい!」
声が裏返ってしまった。
恥ずかしいがそんな事を言っていられる
状況ではなさそうだ。
「……この食糧難ですし、
特別なものは入れてないです。」
またしても声が裏返りそうになるのを我慢する。
「……そうか。」
リヴァイ兵長の顔が少し曇った。
少し残念そうなのか?
もしかしてこの人、料理好きなのかな?
あまり代わり映えしないリヴァイ兵長の表情を
そっと盗み見る。
「……如いて言うなら、材料の仕込みと
煮込み時間かも知れません。」
兵長はそれを聞いてまた少し表情を変えた。
「ほう……詳しく聞かせてくれ。」
あ、この人やっぱり料理好きな人だ。
自分の表情筋が少し緩んだことに気付く。
そこで、少し勝負に出た。
「教えたい気持ちは山々ですが……
こんな小さな食堂の生きる道は
味しかないので、そう簡単に
レシピは教えられないです。」
わざと少し意地悪なことを言ってみる。
店の奥でジムの青ざめた顔が見えるが、
無視することにする。
「……そうだな。」
兵長の表情はまた曇った。
「でも、ここの常連さんになってくれるなら
教えてもいいですよ。」
私のその言葉に、
静かに話を聞いていた
エルヴィン団長が吹出した。
「それは困ったな、リヴァイ。」
エルヴィン団長の瞳の奥は
笑っている気がする。
その顔を見て、少し安心した。
「なかなか面白いことを言うな……」
リヴァイ兵長は再びスープを飲んだ。
「考えておく。」
「またのご来店、お待ちしていますね。」
やっといつものように笑えた私に、
その様子を息をひそめるようにして
見守っていた常連客の駐屯兵たちが、
小さく親指を立てて見せた。