第72章 君だけに見せる顔
「ジャン。本当にごめん……
私も、今朝いきなり思い立ったというか……」
「エマさん。
取り敢えず、今日のところは追及しないでおく。
エレンいるし。」
「え、俺いちゃいけねぇのかよ!」
「お前がいると話しにくいことだってあるんだよ!」
「例えば?」
「例えば……
って、話すわけねぇだろ!
もういい!とにかく黙れ!」
ジャンはエレンの口を
手で押さえるように塞ぐと、
「また詳しいこと教えて。
俺には聞く権利あるよな?」
そう言ってエマの目を見つめる。
「分かった。また時間作って話そう。」
エマはそう言うと、厨房に戻って行った。
「ジャン。
なんか、お前そろそろ可哀想だな。」
エレンの憐みの目に、
「おい、そんな目で
俺を見るんじゃねぇよ。」
と言いながら、ジャンは肩を落とす。
「まぁいいだろ。
俺も恋人なんていないし、
俺らの同期には好きな人すらいない
って奴らばっかりなんだから。」
「お前と一緒にするな。」
ジャンは一瞬羨望の目でエレンを見ると
食堂を後にした。