第69章 運命の恋
「おい、あれ、調査兵団の団長じゃねぇか?」
男の一人が、エルヴィンに気付き、
もう一人の男に小声で伝える。
「言っても調査兵団だろうが。
壁の外で死にたがる変人の集まりだろ。」
エマの顔を掴もうとしたその男は、
そう言って鼻で笑った。
すると、
エルヴィンはゆっくりと立ち上がり
こっちに向かってくる。
そして、その男の正面に立ち、
「君には、そう見えるのかもしれないな。」
そう言って、男を見下ろす。
「なんだよ?間違いじゃねぇだろ?
死に急いでるやつの集まり」
男がそう言いかけたところで、
エルヴィンは男の胸ぐらを勢いよく掴み
軽々と持ち上げた。
「どうやら、君こそ死に急ぎたいらしい。」
男は何も言えず、小刻みに身体を震わす。
エルヴィンは男の胸ぐらを掴んだまま、
男の左袖を捲りあげた。
男の腕には、注射針を刺した跡が無数にある。
「そうだろうと思ったよ。
薬物の影響だな?」
エルヴィンはそう言うと、男を床に落とし、
冷淡な目で男を見下す。
男は心底怯えた表情でエルヴィンを見た。
「見つけてしまったからには
駐屯兵に突きだす必要があるが、
反論はないな?」
冷酷なエルヴィンの目に、
男は震えながら頷いた。