第68章 余裕のない大人の夜
「あ。エルヴィンさん!仕事は!?」
エマは急に思い出し、声を上げる。
「そんな心配、君がしなくてもいい。」
「でも、仕事途中であんなことになったので……」
エマがそう言って俯くと、
「そうだな。
では、本当のことを教えてあげよう。」
エルヴィンは少し笑い、話し始める。
「実は、仕事はもう終わっていたんだよ。」
「え、いつの間にやったんですか?」
「今日の夕方のうちに。」
「………?
え、ちょっと待ってください。」
エマはそう言うと沈黙し、
考えを巡らせる。
「と言うことは、
私の部屋に持ってきた書類は
もう終わってたってことですか?」
「そういうことだ。」
エマはキョトンとした顔で
エルヴィンを見る。