第65章 余裕のある大人の夜
「やっぱり、なんかエマさん、
さっきからおかしいだろ。」
ジャンはエマに詰め寄る。
「自暴自棄、第二弾?」
冗談めかしてそう言うジャンの太ももに、
エマはそっと手を置くと
「投げやりな気分にはなってないけど、
ジャンに詰め寄りたくなった。」
そう言って、顔を近付けた。
「……それって、ただの欲求不満?」
ジャンは固まったまま問いかける。
「そうなのかな。」
エマは考え込むように、少し俯く。
そして、またジャンの目を見つめると、
「お風呂上がりのジャン見てたら、
なんか触りたくなっちゃって。」
そう言って、ジャンの胸に手を当てた。
「ま、ちょっと待て。」
「なにを?」
焦った声を出すジャンに、
エマは小さく笑う。
「ジャン、心臓こんな早く動かしたら
壊れちゃうよ。」
エマの手の温もりが、
ジャンの胸に伝わり、
ジャンの鼓動はまた早く刻む。
「………エマさんが、
そういうことするからだろ。」
ジャンは咄嗟に俯いた。
「……私も結構、鼓動早いよ。」
エマがそう言って
そっとジャンの手に触れると、
ジャンはエマの首元に手を当て、脈を計る。
「まぁ、俺よりは早くない。」
そう言って、
若干ふて腐れたような顔をするジャンを見て、
エマは笑い出した。